燻煙木材とは
ローステッドウッドは湿度、温度等に略左右されない木材ですが、日本国内の高温多湿の気候の変化に対しては順応し難い材質となることから季節毎によるトラスロッド調整やネックハイポジ等の問題が発生している材質です。
また一般的なギターネック材は乾燥期間や保存状況により異なりますが季節毎にトラスロッドの調整が必要となったり、ネックハイポジ起き等の症状も多いのが難点となります。
さらに一般的なギターネック材は音鳴りや弦振動等が良くない為、使用したくないと言ったお客様からの声も聞いています。
そこで燻煙木材加工が出来る設備を作りました。
燻煙木材は低温乾燥で古来(囲炉裏や生地師をイメージすると解り易いです。)からある手法で、徐々に温度を上げて低温度で数日間から数週間燻すことで木材の反り、ネジレ等を出し、木材に含まれている水分と不純物を下げ木材に含まれているセルロース間の水分を無くしてセルロース同士を接着させ精油分を残すことで木を安定させることが可能となります。
燻煙中の木材内部の水分や不純物が一定で排出されるので燻煙後の水分バランスが良い為、木材の重量バランスが良く、木肌が良く、精油分が残っているためローステッドウッドよりも木材加工しやすく、さらにローステッドウッドよりも油分や樹脂等が多く残っているため衝撃による木材の割れや欠け難いのが特徴となります。
燻煙木材も湿度、温度等に略左右されない木材ですが、稀に季節毎または届いた地域の湿度や温度等の気候によりトラスロッド調整が必要となる場合がありますが、その反面強靭なネックになることで弦張力による反りやネジレ等に強くなり音質、弦振動、音鳴り等も格段に向上します。
一般的なギターでは80-85デジベル前後となりますが、燻煙木材加工の場合は85−95デジベル前後くらいとなります。
これらは木材の材質、木材の組合せ、切り取った方向、組込むギターパーツやネックジョイント等により異なります。
オーダーギター・セミオーダーギターによる燻煙木材の加工処理について
オーダーギターやセミオーダーギターの場合は、一度目の燻煙乾燥木材では材料段階で行ない、加工段階で2度目の燻煙乾燥処理を行なうことでより音がさらに良くなり、木材の安定度も上がります。
燻煙乾燥する木材の種類は広葉樹、針葉樹に限定されませんので様々な木材を燻煙木材加工させることが可能です。
ただしスルーネック材とボディ材の場合は材厚が厚いので燻煙乾燥日数は1週間から2週間前後と木材を安定させるためにさらに数週間から1ヶ月前後程度掛かる場合があります。
木材の種類にもよるが、木材を燻すためハニーロースト、ダークローストのような木材へと変化し燻煙処理すると木材が収縮し木材の重量が軽くなることで含水率も下がります。
気になる音質は木材の種類にもよるがレスポンスが早くなり、音の輪郭がハッキリしやすく締まった感じの音で、音抜け等が良くなりますので生鳴りも良くなります。
ただし鉋で木を削ると鰹節を削っているような感触となります。
燻煙木材のメリット・デメリットについて
燻煙木材のメリット・デメリットについては
燻煙木材のメリットデメリットで詳しく記載されています。
よく読んだ上でギター注文や燻煙木材加工のリペア依頼して下さい。
燻煙木材とローステッド木材との違いについて
まず初めにローステッド木材について説明をいたします。
Roasted woodはヨーロッパのフィンランドで開発された商用アプリケーションで、このRoasted Woodは、一般的に木材に含まれる含水率、糖類、樹脂、セルロースと強度等を含んだ木材は、特殊な木材真空加熱装置で180-220度の熱と水のみで約60時間費やして加工処理されることで
通常の木材からRoasted Woodにする変化する過程において木材に含まれる不要な含水率(元々ある芯木材のマクロ水分は残る。)を無くして糖類や樹脂等を結晶化させることで常温による木材の温度、湿度等の変化を制御します。
この加工によって木細胞内のマクロ構造が経年変化によるエイジド木材に近ずくことで弦の振動伝達を早くし、弦楽器全体が共鳴することでより音色、音質等がエイジド木材に近い鳴りの良い弦楽器にすることが出来ます。
ただしロースト木材の製造過程において木材細胞に含まれる含水と一緒に水分と不純物は下がりますが木材の内部破損がありますので精油分も無くなるためパサつくだけでなく、木材内に存在する水と樹液等を強引に強制的に排除するため、
ロースト木材の含水率は実質0に近くなりますので日本国内の高温多湿の気候の変化に耐えることが難しい傾向となります。
また木材乾燥中に発生する木材が抜ける時の水分バランスが悪く、精油分が無いので、ちょっとした衝撃で木材が欠けたり、割れたりまたはトラスロッドのナットを回した時に修正が不可能に近いくらいネックが反る場合があります。
逆に燻煙木材は木材を低温でじっくり燻すので木材に必要な水分、樹脂、油分等を残し、さらに燻煙中の木材内部の水分や不純物が一定で排出されるので燻煙後の水分バランスが良い為、木材の重量バランスが良いのでローストウッドと比べて割れにくく、欠け難く、そして反り難くなります。
また音質や音色等もローステッドウッドと同等くらいの明確な音質と広がりのある鳴りを持っています。
音が締まったような感じだと個人的には感じます。
燻煙木材のネックグリップ等の塗装について
ネックグリップやヘッド等の塗装は最低でもオイルフィニッシュ塗装は必要となります。
ネックグリップやヘッド等に塗装をしていない場合は、人間の油分や汗等がネックグリップやヘッド表面等に付着することで汚れが経年変化とともに付きますので最低でもオイルフィニッシュ塗装は必要となります。
また汗はボディに付着し、汗に含まれている油や汚れ等は経年変化とともに染み込みますので、ボディ材も最低でもオイルフィニッシュ塗装は必要となります。
ギター修理におけるネックの反りの修正についての注意事項
お客様が楽器店等で購入した一般的なギターにおいてはトラスロッド調整においてネックの反りが本来の位置まで元に戻せない場合があります。
これは木材の材質の影響が大きく左右されるため左右への反りや順反りまたは逆反りが大きくなる影響が働くためトラスロッド調整では修正が出来ない場合があります。
またハイフレ落ち、ハイフレ起き、ネック波うち等の症状が発生し、ギターが弾き難い場合には、トラスロッド調整と指板調整をすることで弾き易くなる可能性がありますが、ネックと指板の状態により修正が出来ない場合があります。
これらの症状に対しては様々なジグとゲージで目視で実際に症状を確認しますが、目視で確認した場合では完全に修正が可能と感じた場合でも実際に作業を始めた状態とでは異なる場合がありますので完全に修正が直るとはハッキリとは断言できませんのでご注意下さい。
また燻煙木材加工を使用して順反りや逆反り等の反りを矯正修正することで元の位置またはある程度の位置まで修正は可能ですが、弦を張り経年変化により元の状態に戻る可能性もありますのでご注意下さい。
オーダーギターの場合は、当工房が所有している燻煙窯に木材を入れて材料段階で一度目の燻煙加工処理をいたしますが、燻煙加工処理は出来上がるまでに数日から2週間前後掛かり、木材の種類やサイズにもよりますが木材が安定するまでに2週間〜1か月半前後掛かります。
さらに加工段階でもう一度燻煙乾燥木材の処理(※この場合の燻煙木材加工は数日間のみとなります。)を行なうことでさらに木材が安定し音鳴りが良くなりやすい傾向にあるが木材の種類により木材が安定するまでに14日〜1か月半前後掛かります。
そのため燻煙処理に時間が掛かりますので、 製作期間が遅延するお詫びとして木材の遅延が発生する商品(オーダーメードギターとセミオーダーギター製品)価格の見積料金から5%割引いたします。
さらに燻煙木材はサンディングや掘削等の加工をしても1年ぐらい臭い(極僅かに残る)が発生しますのでオイルフィニッシュ希望のお客様には大変ご迷惑をお掛けいたします。
お客様のご理解とご協力をお願いたします。
修理時の燻煙木材の加工日数について
ギターの注文数によっても異なりますが、一度ギターのパーツを全て取外し、トラスロッド調整してネックを出来るだけ直線をだします。そして数日間ギターを燻煙乾燥させ、燻煙後14日−1か月期間をおいてからフレットすり合わせやサイドフレット処理、組込み、塗装等に入ります。
燻煙乾燥窯は電子制御となっているため万が一火事が発生する恐れがあるため野外に置いている影響で雨季の場合(雨が降っている場合は出来ません。)は、燻煙乾燥出来ません。
万が一ギター本体を盗まれないように特殊な鍵が付いており、さらに24時間ビデオ監視と鍵が合わなかった場合や無理にドアをこじ開けた場合には大音量のブザーが鳴る仕組みとなっていますので少しは安心出来ると思います。
また燻煙乾燥窯は大型なので扉は厚く、扉は重く、地面に固定されていますので持ち運びは出来ません。
ギター配送後のトラスロッド調整について
Rostedwoodよりかはトラスロッドの調整は少ないですが、日本の経年変化(季節毎)による湿度、温度によりトラスロッド調整が必要となる場合があります。
届いた商品は地域毎の気候や湿度等によって数日後またはその日にネックが反る場合があります。
この場合は当工房で製作したオーダーギター、セミオーダーギター、新規で製作したネック材に限り当工房まで着払いでギターを配送して下さい。
稀にしかネックの反りは発生しませんので商品がお客様のもとに届いてから3回まで無料でトラスロッド調整いたします。
燻煙木材の種類と燻煙可能なサイズについて
Roastedwood材のボディではアルダー、バスウッド、メイプル等、ネックではハードメイプル材、ソフトメイプル材の木材しか提供していません。
そのためロースト材の種類が少ない為、お客様に提供可能な木材が限定されます。
逆に燻煙木材の種類は広葉樹、針葉樹に限定されませんのでマホガニー、ローズウッド等の木材も可能です。
ただしスルーネック材とボディ材の場合は材厚が厚いので木材を安定させるのに日数が掛かります。
1200mmまでのスルーネック材の燻煙も可能です。
含水率メーターと木材重量について
含水率メーター
で木材の含水率を測定します。
例えば様々な木材を製材して人工乾燥後に自然乾燥させ半年〜1年後の含水率は8%〜10%前後の含水率となります。
木材の種類にもよりますが燻煙加工処理を施すと含水率は3〜5%前後となります。
なお1%含水率が下がると3%強度が上がると云われています。
これらはギターを注文していただいたお客様のみ含水率がギターチェック一覧表に記載されますが、含水率がかなり低い場合は測定不能となります。この場合は含水率5%以下とギターチェック一覧表に記載させていただきます。
当工房が使用している木材含水率計
材厚:50mm
比重:0.35−1.2
精度:0.5
表示:0.1
計測表示:5−60%
温度・湿度自動設定
ピンレスタイプ
注意事項
お客様からお預かりした塗装してあるギターは塗装を施してあるため含水率は測定出来ません。
ヤニが多く付着している木材は測定出来ない場合があります。
測定するタイミングについて
- 真新しい木材のみ木材燻煙加工処理前に一度含水率と木材重量を計測します。
- 燻煙窯から木材を取り出した時(木材が冷めた時)に含水率と木材重量を計測します。
- 加工したギターを一度重量と含水率を計測し、燻煙窯から木材を取り出した時(木材が冷めた時)に木材重量と含水率を計測します。
持ち込まれたギター木材の測定するタイミングについて
お客様から持ち込まれたギターの含水率は計測出来ませんので、重量のみ測定させていただきます。
- 燻煙加工処理前に一度ギター木材の重量のみ計測します。
- 燻煙窯から木材を取り出してから塗装面と木材が安定した時(2週間ぐらい)に木材重量のみ計測します。
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